銘柄選びは人気投票

 第1回目の投資は損はしたものの、素人がいきなり初めてすぐにうまくいくわけはないだろう、という謙虚な気持ちもありました。従って、株についての勉強(といっても今考えると怪しげな投資指南書をいろいろ読んだだけですが)は続けました。

 一方株式投資の売買のタイミングは、自分のメンタルな部分に大きく左右されることがあるな、ということにも気がつきました。さらに、いろいろな株に関する書籍を読んでいくと、株に投資をする人が重視するのは、チャート(株価のグラフ)と業績であることが分かりました。

 普通はその両方を見ながら銘柄を決定していくようですが、中にはチャートしか見ないとか、チャートは無視して業績の変化だけを見る、という人たちもいるようです。 自分はどちらが好みなんだろう?どちらかといえば慎重派ですから、やはり業績を重視したいなと考えました。

 そこで雑誌等に推薦されている銘柄や、四季報の中から、自分好みの仕事をしている企業をいくつか選んで、業績の推移表をエクセルで作ってみました。

 実際には業績だけでなく、資本金の動き、従業員数、負債額、ROE、ROAなど、四季報に載っている項目を数年間に渡り表にまとめ、その推移を見てみました。

 そうやって見ていくと、当たり前ですが全体として業績が上向いている企業は株価も上昇しています。しかし上昇の相関関係はあっても、業績が30%増加すると株価も30%増加というような比例関係ではなさそうです。

 つまりそこに様々な人間の思惑が絡み、今後業績が伸びそうだ、と思う人が多いと株価は実際に業績が上がる前からじわじわ上がります。(上がることを予想する人がいるという事です)

 一方業績が上がるように見えても、その先の発展はあまりないだろうと感じる人が多ければ、株価の動きはそれほど上がらないし、また業績の変化に較べても株価の変化率は鈍いものになります。

 また、日本経済全体の動きに個々の株価が引っ張られることもあり、この先日本の景気は上昇すると考える人が多ければ、それこそバブルの時期のように上場している株はすべて上昇することになります。

 一方、もう日本はダメだ、と判断する人が多ければ、個々の企業がどれほど業績を伸ばしても、全体に引きずられる形で株価は低迷します。

 さらに勉強を続けていくと、「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉が示すように、世界のどこかで起きた小さな事件が、一企業の業績に影響を与えると言うことも分かってきました。

 詰まるところ、株価の形成はその株を売買している人すべての思惑によって形成されているものであり、その思惑を一個人が予想するのは至難の技であるということです。

 ランダムウォークという語句を知ったのも、そういった株の勉強をしている最中で、理系の私は「なるほどな、確かにその通りだ」と、その考え方に妙に納得してしまいました。

 というわけで、株価の今後を予想するなら(予想できないと最近は思っていますが)、世界のあらゆる動きとその会社を取り巻く動き、社長から社員までの動き、そしてその動きを予想している大口株主、その株を投資信託の銘柄として選定している投資会社の人、さらに株式投資のセミプロ級の人たちから私のような初心者のすべての人の考え方や心の動きをトータルして考えなくてはいけないと言うことが分かり、結論から言えばそれは無理だろう、と考えるようになりました。

 つまり簡単に言えば、そう簡単に株価が上がる銘柄を見つけることはできないということです。

 またこういった考えをまとめていく途中で、株というのは一種の人気投票であり、自分が良いとは思わなくても、大多数の人が「この企業は将来伸びる」と考えて投資をすれば、株価は自然に上がることも分かりました。

 ということは、銘柄選びというのは、業績分析よりも、大多数の人が選ぶのはどんな銘柄なのか、ということを予想する作業ということであり、その状嫌悪一つとして業績やチャートが存在すると言うことです。