株を買ってからの心境

 株を買ってみたら、気になることがいろいろ出てきました。所定の手続を終え、今から考えると単位株で買ったわけですから1000株の指し値で買っても良かったと思いますが、「株を買える」という高揚感に酔いしれて成り行きで注文。

 すぐに無事買えましたというお姉さんの言葉に内心小躍り。何とももったいない買い方ですが、最初は誰もがそんなもんではないでしょうか。すべての書類を受け取り、証券会社を出るときは意気揚々。「これで自分もいっぱしの株主様だ」なんていうプライドすら感じます。

 しかし投資した金額は1000株単位の株で、当時400円弱の株ですから、これでボーナスの大部分が消えました。しかしその金額がいずれ増え、儲けが出ると予想していた私は、なんだか急にちょっとお金持ちになったようで気がしていました。(今から考えれば、本当に幼稚な感覚で、世間知らずの甘ちゃんでした)

 というわけで、それからしばらくは新聞の株式欄についつい目がいき、日経平均という言葉に敏感に反応するようになりました。毎朝新聞を開いて、最初に見るのが株式欄。

 しかし選んだ会社は、もともと最初から冒険は出来ないと考えていたので、堅実銘柄を選んでいます。こういった会社の株価は当然ながら得てしてほとんど目立った動きはしません。

 最初は上下動が激しい銘柄は避けた方がよいだろうという判断もあったのですが、他の銘柄が毎日のように10円だの20円だの上がったり下がったりする中で、時折思い出したように数円動くだけで、いつしか最初の高揚感は失われていきました。

 それでも株を買ったという意識から、さらにもっともっと株式購入について勉強するべきだという意欲だけは芽生え、いわゆる株式専門の雑誌や、大きな本屋さんでチャート入門とか、株式の変動要素、株式の格言みたいなものを購入し、乱読し始めました。

 本当はそういった本をすべて読んでから納得して投資にチャレンジすべきだと思いますが、さすが若さ故の試みだったと思います。

 様々な株式投資指南書を読んでみると、投資の基本は「安いときに買って、高いときに売る」という単純な理屈があるだけでした。しかし安いときや高いときが、いつなのかは誰にも分からない、ということも分かって来ました。

 その結果、底を見極めるのは無理だから、適当なところで買いを入れ、天井を見極めるのは無理だから、ある程度上がったら売ってしまえ、という方法論が出てきます。

 この考え方ももちろん納得できるのですが、当然底から少し上昇したので買ったらすぐに下落した、とか、少し利益が出たので売ったら、そこから一気に上昇した、という現実に直面します。

 つまり簡単に言えば、いつ買えばいいのか、いつ売ればいいのかという判断は、基本的には誰にも分からないという理屈になります。

 ただ常に株価が上がったり下がったりしているグラフを見ていると、あたかもここが当面の頂点だとか、当面の底だとか、なんとなく分かるような気がするのも事実です。(実際には大きな錯覚だと思っていますが)

 ただその「分かるような気がする」というのは個人個人の主観であって、しかも過去のグラフを見ているだけですからあくまで癇です。しかしその癇がある程度信用できそうだと思えるならば、グラフを元にして株価の上下を予想できるのではないかと考えるのは論理的な帰結です。

 そうやって考えられたものがチャート分析だと思います。その一番基本が移動平均線かなと思っています。