初めての株式投資

  資産運用として注目されるものの代表格は、投資信託と株式投資だと思います。私自身、通常の貯蓄より株式投資の方が、資産を増やすには効率がよいのではないかと思っていました。

 そう思わされた背景には、私自身が仕事を始めた時期が関係しています。私が正式に就職して働き始めたのは1980年代。まさにバブルまっただ中。

 どんな銘柄でも買えさえすればすべて上がる、と囁かれていました。実際毎年のように株価は上昇。同年代(20代)のサラリーマンのボーナスが数百万というような噂が飛び交っていました。

 当然そういった噂は資産形成にちょっと関心を持てば嫌でも耳に入ってきます。というわけで、「俺も少しずつ投資をして資産を増やさないといけないな」という思いが芽生えていきます。

 ちなみにバブルまっただ中の頃は誰もそれをバブルだとは言わず、買えば買うほど上がると信じていましたので、そこには「投資によって資産が著しく減少することもあり得る」という根本的な投資の負の側面に対する考え方が欠落していました。

 まさに怖いもの知らずの素人投資家であって、プロから見れば、これほど扱いやすい投資家はいなかったと思われます。それでも「そろそろ株式投資でも始めるか」と思い、最初に買ったマネー雑誌が「日経マネー」。 今から30年以上前になると思います。

 「日経マネー」を買ってしばらくして、今度は「マネージャパン」という雑誌を購入。日経マネーの方が、記事が少し固いように感じ、マネージャパンの方が素人にも分かりやすい書き方をしているなというのが最初の印象でした。

 しかしこの手の雑誌は、今見ればすべての記事が買いさえすればいかにも儲かるように書かれていて、損をすることなど考えられないという論調になっています。

 実際に読んでいくと、株価のぺージには様々な銘柄が紹介されていて、有望株、上昇可能性大、チャートを見れば一目瞭然、業績急回復、新開発の・・・が業績に貢献、というような、うれしい文字が並んでいます。

 簡単に言えば、掲載されている銘柄はすべて上がる、という予想の元に記事が書かれているわけですが、当然始めて株を買おうと思った初心者は、そこに書かれていることの大部分を素直に信じます。

 なるほど、これはたしかに業績が良くなっているなとか、この新製品は素晴らしそうだとかチャートが上り調子だとか、いちいち納得できてしまいます。

 ただ幸か不幸か、当時はまだミニ株という制度がなかったので、単位株を買うためには、ある程度まとまったお金が必要でした。新聞に書いてある株価の値でそのまま買えるわけではない、という当たり前の事もこの頃知りましたので、素人だと言うことがよく分かると思います。

 またその単位は、当時ほとんどの株が1000株でしたから、500円の株を買おうと思ったら50万円必要だという事が分かり愕然としました。従って、そのお金の捻出と、もし下がってしまったらという恐怖感も一応わずかにあり、これぞと思う銘柄をいくつか候補として考えていましたが、実際の購入に待ったをかけていました。

 一方、時は徐々にバブルに向かってまっしぐら。何を買っても儲かりそうだ、という雰囲気がありました。さらにコンピューターの発達も激しく、株フォーラムなるものが多数乱立し、素人がプロ同様の意見交換をして推奨銘柄を上げたりしていました。

 そういった雰囲気が徐々に頂点に近づいていくと、当然「ここで買わねば一生後悔する」みたいな雰囲気が出来上がります。というわけで、その熱狂した雰囲気を感じ取っていた私は、ボーナスが出て、当面そのお金の使い道なかったため、ある日「よし株を買ってみよう」という決断をしました。