健康状態の悪化

 少しでも長く勤めたほうが資産の点では間違いなく有利になることが分かりましたが、一方で自分のその頃の健康状態を考えると、早期退職の方が良いのではないかと思っていました。

 そうこうするうちに季節は秋から初冬に変わっていきます。早期退職をするかどうかという最終決定は年明けにしないといけません。

 その間実家の母親に「もしかすると早期退職するかも・・・」と打ち明けたところ、「しょうがないけど、その後どうするんだ・・・」という話になり、やはり世間体が・・・と言うことを言外に含んでいるなと感じました。

 確かに見かけはまだまだ働けそうな人間が昼間から家の周りをフラフラしている状況というのは余り好ましいものではありません。

 しかしそうは言ってもここで決断しないと自分の体調はますます悪くなりそうだ、と言う予感がありました。職場の同僚にも、それとなく冗談めかして話し始めました。「もうそろそろ限界なので、来年は皆さん頑張ってください・・・」なんていう感じです。

 かねてより察していた人もいれば、「まさかそんな」と驚く人もいました。もし抜けたら仕事は誰が引き継ぐの?と学校の仕事を心配する人もいましたし、私自身の健康を案じてくれる人もいました。

 しかし、結局周りの反応だけでは結論が出せませんでした。そもそも周りの人間の反応で、結論が変わるようなら、その気持ちはかなりいい加減なものであると思って間違いなさそうです。

 できれば誰かに引き留めてもらいたい、というような甘えの気持ちがあるのかもしれません。一方で退職というのは、出来れば惜しまれつつやめたい、という気持ちになるのも事実だと思います。

 と思いつつも、当たり前ですが、最後の決断は自分でしなければなはりません。「さてどうすべきか?」と悩んでいた年明けあたりから、気がかりなことが一つありました。それは私自身の健康状態が徐々に悪化する兆しが見えてきたことです。

 もしかしたら早期退職をするかどうかの悩みによるストレスかもしれませんし、2年間の妻の闘病生活を経て、父子家庭で1年近くが過ぎたため疲れがでてきたのかもしれません。

 基本的にはストレスによる自律神経失調症の症状です。最初は不眠です。早朝3時や4時に目が覚めると言うことが頻繁になりました。

 一度目が醒めると、これまでのこと、今後のこと、そして今現在の仕事のことが気になり、再度寝ることは出来ません。

 しょうがないので「健康のため」と考えて「早朝ウォーキング」に出かけたりしましたが、気持ちは良いものの肉体的にはさらに疲れます。

 やがて起きた瞬間に動悸を意識し始め、さらに気持ちの悪い油のようなべったりとした寝汗をかくようになり、枕元に着替えとタオルが欠かせなくなりました。

 訳の分からないとてつもない悪夢を見たという記憶だけで深夜に飛び起き、あまりの動悸に血圧を測ると180/110というような、それまで経験したことのない高血圧症状も出てきました。

 職場ではなんとか仕事はこなしていましたが、なんだか人と会うのが億劫になり、会議をしていても投げやりな気持ちが先走り、前向きな討論が出来ません。そもそも人と話すこと自体が面倒に感じられます。

 医者に行き、降圧剤を増やし、軽い睡眠薬を処方してもらいました。症状を聞いた医師は「自律神経が・・・」とはっきり言いませんでしたが、「あっこれは自律神経失調症で欝直前だな、ということが自分で分かりました。